歯周病は遺伝するの?
歯周病は感染症です。お口の中に存在する歯周病菌によって引き起こされ、成人の8割以上が歯周病、またはその予備軍であると言われています。そのため、「ほとんどの人はかかっている」と言っても過言ではない歯周病なのですが、これは一体遺伝との関係はあるものなんでしょうか?遺伝だったらかかっても仕方がないのでしょうか?
歯周病が遺伝することってある?
結論から言うと、一般的には歯周病そのものは遺伝しません。歯周病とは歯周病菌が感染して増殖し、それに対する人間の抵抗力とのバランスが崩れた時に発症、進行する感染症です。
この感染経路は実はまだよくはっきり分かっていませんが、この歯周病菌に感染した後に歯周病を発症するかどうかという抵抗力の遺伝、また、歯垢や歯石のつきやすさ、歯周病を発症しやすい歯並び、唾液の質などは遺伝する可能性があります。また、歯周病を発症しやすくなる糖尿病は遺伝が大きく関わっています。
また、家族で同じような生活習慣、食習慣を持っている場合、プラークのつきやすさなども類似してくると考えられます。感染症であることから家族間での細菌感染も考えられます。
結局、結論としては、一般的によく見られるタイプの歯周病の場合、歯周病の病気そのものは遺伝しませんが、「歯周病のかかりやすさ」は遺伝すると言えるでしょう。
遺伝性の強い歯周病も・・
じつは歯周病といっても、いくつか種類があります。それぞれ特徴を見てみましょう。
成人型歯周炎(慢性歯周炎)
一般的によく見られるのは成人型歯周炎(慢性歯周炎)と呼ばれ、全体の90%を占めます。プラークコントロールが不十分であると40代くらいから症状が顕著に現れてきます。ゆっくりと進行していくことが特徴ですが、喫煙していたり、糖尿病を発症したり、歯ぎしりなどの強い力がかかると急速に進行しやすくなります。
早期発現型歯周炎(若年性歯周炎)
これは歯周病患者のうちの約8%の人に見られると言われており、早くて11〜12歳頃から発症し、40歳〜50歳くらいで急速に進行して歯が一気に抜けていく、というものです。この歯周病に関しては家族内での発生が多く見られるとされています。つまり、遺伝の傾向が強いとされています。原因菌としてはアクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス(A.a.菌)が関与しているとされています。
急速進行性歯周炎
20〜30代で発症し、急速に歯周組織の破壊が見られます。口の中の特殊な細菌であるポロフィロモナス・ジンジバーリス(P.g.菌)が関与していると考えられています。
特殊性歯周炎
ダウン症候群、好中球減少症など特殊な遺伝性疾患において見られる歯周炎で、歯周組織の破壊が急速に進みます。極めて少ないですが、これも遺伝性のものです。
このように、中には遺伝の傾向が強いとされている歯周病も頻度としては少ないですが、あります。
歯周病にならないためにはどんなことに気をつければいい?
特殊な遺伝性の歯周病を除いては、「歯周病そのものは遺伝する」とは言えません。しかし世の中には歯磨きを頑張っているのに歯周病になる人もいれば、歯のケアには無頓着なのに歯周病にかからない人もいます。
やはり、このことからも歯周病になりやすい人となりにくい人がいる、というのは確かに言えるかと思います。実際、歯周病のかかりやすさや進行の速さには遺伝的要素が多く関わっていると言われており、日本人の3割は歯周病を進行させやすい遺伝子をもっている、という説もあります。
しかし、歯周病を進行させやすい遺伝子をもっているからといって絶対に歯周病になるわけではありません。歯周病は多くの要素が絡み合って起こります。それゆえ歯周病にかからないためには、ブラッシングをしっかりして歯垢をためない、ということだけではなく、歯垢のたまりやすい食事をしない、糖尿病にかからないように健康に気をつける、タバコを吸わない、歯ぎしりのコントロールをする、また、「菌をもらわない、うつさない」というように、多方面に注意を払う必要があります。
まとめ
歯周病は生活習慣病の一つと言われています。多くの歯周病は生活習慣の乱れから起こっている、ということです。歯周病から体を守るために、一度生活習慣を見直してみましょう。
カテゴリー:みらくるコラム 投稿日:2016年11月17日